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【感想】Summer Pockets【ゲーム】

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 ――公式サイト

 僕たちは、忘れたままの夏を駆け抜けたのだ。


 傷心した主人公が遺品整理を名目に一夏をとある島で過ごすというのがあらすじ。
 夏休みの楽しさ、ノスタルジック、この双方は突出していました。
 グランド以降はその傾向を外れ、全体を通して泣きの要素が酷く強いというわけでもない。

 全年齢作品ですが記事のカテゴリなんかはエロゲに含めています。ノベルゲームという形態にKeyが発売していることによる処理です。


 すぐにネタバレ感想に入ります。久しくネガティブな意見強め。






# 各評価
・プレイ順
鴎 > 蒼 > 紬 > しろは
・ルート評価
鴎 > 紬 > しろは > 蒼
・キャラ評価
鴎 > 蒼 > しろは > 紬


# 個別

・鴎
 宝の地図のギミックから、全てが解けた跡にふんわりと広がり始める喪失感。
 この際、カモメが抱えていた不幸は一切関係無く、夏が終わった時に二度と会えなくなってしまう少女との冒険。これだけで評価に値する出来だった。

 不可思議な現象を用いた展開ながらも、非常に丁寧に描写されており決して予想できない展開は無い。
 どこか違和感を抱えながらも、少女との幸せな時間、主人公とプレイヤーが否応にでも感じる既視感から、夢から醒める酷く冷たい別れ。
 故に全てを知り、受け入れた主人公が夢を繋ぐ。これでほろ苦い鬱と、これから訪れるだろう希望でカタルシスの輪が完成されている。

 ふんわり恋愛模様も繰り広げられており、理想を体現しようとしたカモメに、理想を望んだカモメ双方のキャラクターに愛嬌や魅力を抱く。
 強いて挙げるような不満点は他キャラとの交流の少なさだろうか。カモメという人物像からこれ以上食い込むのも難しいだろうという理解はあるのだが。

 初めて船を見つける直前、洞窟を抜ける瞬間は声を出して泣きそうになった。
 言語化が難しいのだが郷愁を抱く舞台、そこで行われた二人の小さな冒険、一冊の本から伝わった子供心が乗算され、大方を察し、不穏な展開に身を竦め、洞窟を抜ける瞬間まるで夢から醒めるようなシナジーを用いて感情が零れそうだった。これで伝わるのかな。


・蒼
 脳内ピンクちゃん。唯一性的関係を強く描写され、久しく「何故エロゲじゃなかったのか……」と心中嘆いた。多分R-18だったらそこまで求めなかったと思うので、上手く焦らされた気がする。

 展開自体は全体の導入と言ったところで激しい動きが少なく、真相や先の展開の予想が容易かった。
 だからルート自体の評価が悪いのか……と問えば、蒼のシリアスに思い詰めるその儚げな様子、コミカルに軽快な様子で交わされるコミュニケーション、甘酸っぱくも胸焼けしない良い塩梅の恋愛関係、と蒼というキャラクター性でどうとない舞台は彩り鮮やかに、ここでしか登場しない藍も非常に愉快な存在で決して飽きさせなかった。
 また他キャラと違い別離からの復帰が自然だったことも読後感を良くしているだろう。

 蒼というキャラは色々と美味しいポジションを取っており、交友関係は島出身のキャラと根深く、別の出自を持つキャラとも駄菓子屋という位置から積極的に絡んでいけて、エロいネタのオチにも便利極まりない。
 キャラそのものの評価は僅差でカモメが勝ったが、多分攻略順が変わっていれば蒼が上に来ていたように思える。まぁ共通ルートで抱いた好感からカモメを先に攻略したのでそんなこと在り得ないのだが。


・紬
 タイトル画面から一人ずつ消えていくヒロイン、一歩引いて見ればクライマックス→別離→エピローグ後の再開という枠に嵌められる展開……いやぁ紬さんはどうなるんでしょうなぁ!?(白々しい)

 と斜に構えて、時代遅れな特徴的である語尾を用いるヒロインとの日々を読み進めていたのだが、あぁこれが予測可能回避不能ってやつか。
 藍同様、このルート専用というか初めて顔を見せるだろう静久がネタキャラかと思いきや、もう一人の主人公のような立ち位置をキープしつつ、恋人関係になった二人と上手いこと距離取ってくれるし、そんな二人が怪しい紬のことを詮索せず、ただ受け入れ、これ以上知る必要は無いと決断しながらも抗い続ける姿。泣く。

 非常に心の描写が上手いルートであり、もう一人の紬同様皆が能動的に選んだ"要らない"というどちらかというと負の感情の選択に静かな意思を感じる。
 それでいて前二つのルートで燻っていた他キャラとの交流という切望も十二分に満たしてくれるんですよ?わかりきっていたオチであるあのロウソクに囲まれたワンシーン、感動するなという方が無理なもので。
 蒼とは違いキャラはいまいち受け入れられないが、ルートは三つ目に回したと考えれば尚更拍手を送りたい。


・しろは
 大雑把な感想で良いのなら蒼と似た傾向で済む。
 ルート自体は最後という不利、案の定過去作含めデジャヴまみれでいまいち盛り上がれない、紬の時点で予想されていた個別ルートの扱いを外れる事もなく、後にあるだろうグランドがここを下敷きにされるのだろうなと考えれば尚更。

 ただね、しろは可愛いね。
 臆病な小動物が徐々に心を開いて、自分らしさをぶつけてくる気持ち良さ。無言で広げられる間というコミュニケーション。
 それに加えて他キャラとの絡みが最も多く、濃いルート。うん、夏休みしてるわ。


# グランド
 怒りや喪失感に身を任せると決めて感想書くためにキーボード叩き始めたのに、ここまでかなり高評価だなー……ここからなんだよなぁ!(悲痛)

 しろはを基盤としながら意味深な立ち位置に存在していたうみが掘り下げられ始める。
 キャラ自体に不満は無く、ギミックそのものは結構驚くような事してきて、どこか食べ飽きたような展開が続くものの、やはり感動するよう創られたポイントでは相応に響く。
 ALKA時点でも印象に残るCGが複数あり、三人居たはずの写真、花火を眺める後ろ姿、しろはがこちらを認識するメタ的な視線――やはり色褪せた蝶がそっと墜ちていく締めで良かったのでは??

 Pocketに続き、鴎ルートを彷彿させる道中……は良かったんですが、次元を超えた再会という舞台にはある程度感動しつつも泣くにはまるで足りないクライマックス。
 そして視点は再び主人公に戻り、誰とも交わらなかった夏休みを過ごし始める。
 えぇ、喪失感は半端なかったです。借金を借金で返すような負の連鎖を止める誰かの犠牲、あの懐かしくも楽しかった夏を倉庫で終えた彼の姿、これで終わってしまえば誰も報われないじゃないか。
 そんな哀しみを抱えながら振り返る
  ――駄菓子屋の前でしろはとすれ違ったシーンで終えておけばバッドエンドとして形を残せたのでは?
  ――傷つかなければ出会わなかった、出会わなければ傷つかなかったと船で旅立つ。
  ――おい、いま何故飛んだ。理由の説明、そうしたら喪失感を忘れながら強引なハッピーエンドに身を任せられると思うから>エンドロール<


# 総評
 バッドエンドよりはハッピーエンドが好みだけれど、理屈無きハッピーエンドはただのご都合主義でこの個別や島で抱いた思い出の行き場はどこなんですか、と思いながらこうして感想を書いた次第です。開き直ってバッドやビターじゃダメだったのか。

 果たして何がいけなかったのか。
 余分な調味料?足りない一歩?相反するモノ?
 見たかったのは夏休みであり、故郷であり、ALKAで行われたような全キャラの交流であり、またALKAですら不足していた。
 楽しい夏休みや道理無く抱いてしまう狂ったノスタルジーを求めていたのにグランドの流れが家族愛を推して来た。
 グランドに入らなければ良かった、そもそもここで終えて欲しかったという願望が多いことから期待し過ぎた?
 レビュー読んで独りでは気づかなかった歌詞とグランドの差異。伝えたいだろう一文、メッセージの相違。
 どこまでも抱き続ける見た気がする展開という既視感、セルフオマージュを含めた過去作を連想させる動き。


 激情も収まって来たのか、ただこうして振り返ってみればそう悪い物ではなく結構良い作品だったのでは、という印象。
 現代受けしやすように整えられたKeyっぽさ、ハズレ無くガンガン琴線を叩いてくる共通ルート、一部キャラに妙な愛着が湧いたり、ミニゲーム交えて楽し気に広げられる夏休み、もはやプレイヤーの出自関係無く郷愁を誘って来る狂い愛おしきミーム。
 システム周りも優秀だし、複数原画やライターを採用していながらも目立って歪な箇所は(グランドを除き)出て来ず、音楽はらしさを出しながらも作品に合った良い物が多い。
 ずっと「ポケットをふくらませて」を聴きながら感想書いてますが、んー秀逸。どうしようもないよと叫んでいるような韻の踏み方はタイムリープの不条理を表しているようで。

 グランドだけが趣味に合わなかった、と結論を出し、まだ完遂していないミニゲームや、共通のノスタルジック、卓越した出来と感じた鴎ルートに、居心地の良い蒼ルート含め今後も繰り返しプレイするかと。
 発売からしばらく経ちデータ数が増えても揺るがない高評価に思わずポチっとしましたが、個人的期待ほどではなかったものの購入に後悔はせず。全年齢作品なので初心者含め多くの人にもおすすめできるかと。逆に様々なコンテンツを味わった人や、古参エロゲーマーにはそこそこで落ち着くかな。

 スタッフコメント読みましたが麻枝さんの個所が特に思うところ多い。
 リリースされた今でもまだ惜しい、一歩足りない、そう思うし、今回シナリオや音楽を振り返ってもKeyらしさはこの人ありきだなと再認識するばかり。後任育成には間に合わなく、老舗ブランドであるKeyは今後とも新しいらしさを模索して他と肩並べ進んでいくのかなぁと。
 総じて偉そうな物言いですが寂しい、惜しい、そういった正の感情ありきの負の感情が隠せない感覚。
 Summer Pocketsは確かに心に残りました。ありがとうございます。
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