マンガ、アニメ共にFate/kaleid liner プリズマ☆イリヤが根強く新しいファン層を取り入れ続けたり、Zeroに続いてFate/Apocryphaもアニメ化したとの声も聞いた。
いやぁ、まるで時代についていけていない自覚あるし、FGOこっそりやろうとしたんだけどスマホの長時間操作は体質上指先が耐えないので断念。Zero、UBW共にアニメは物凄く楽しめたので、今後も気が向いた時だけFateを追うライト層で居よう……と思っていたんですが、以前うたわれるもの一式借りた時に押し付けられた物の中に紛れていました。なんて(質、量共に)重いおまけだろうか。
アニメや漫画、それにネタバレ等で六割以上知っている作品を一々大量の時間食われてプレイするか……? と自問しましたが、そういえばきのこの文章そのものを読んだ機会はほぼ無かったなぁと少しずつ進めようやくクリアした次第です。
わたしが今回プレイしたように、Fate/stay nightという作品は様々な媒体で世に顔を出している。
動的、音的に秀でたアニメだったり、最低限の文字と動かないイラストによりワンシーンワンシーンを魅せて来る漫画だったり。
ただ今回改めてFate本編を触った感想としては、この作品はゲームという媒体が最も適しているだろうという事だった。
質が良い上に、後発を生み出せないような先天的な才能、ユニークさを備えた奈須きのこの文章が見れるのは言わずもがな、心理描写が掘り下げて見える事によりこの事象が如何にイレギュラーな事なのか、素晴らしい事なのか。
このキャラが如何に崇高な信念を持っているのか。葛藤し、苦しみ、まともに見えて実は人の形をしているだけで狂っているのか。
ここまでならば小説で良い。むしろ小説の方が表現するにあたって強い媒体になる。
ただハチャメチャな日常、恐怖と憧れを抱く戦闘、世界の裏側を覗くような幻想。
これら全てを正しく認識するためには、どうしても視覚面で何かが必要なのだ。
特に独特過ぎる世界観は文章だけならば到底ユーザーは認識が届かず、自分という枠組みを超える事無くきのこの世界観に至れなかっただろう。
こうして漫画では邪魔になるだろう文章量をノベルゲームとして纏め、イラストは文章の視覚化だけでなく演出により作品を映えさせ。音により作品を頂点にまで至らせるのだろう。
再確認しよう。Fate/stay night(シリーズの基盤)という作品は、小説、漫画、アニメ、ドラマCD等ではなく、
文章を基盤としながら、イラスト、BGM、SE、音声、システムを活かす事の出来る作品だからこそ、総合芸術であるゲームという媒体が作品を表現するのに最も適している。
##各ルート
#セイバー
漫画辺りであらすじは知っていたのですが、実際ゲームをプレイしてみて圧倒されたのは三点。
・宝具の投影が如何に理外な行為か
日課の自殺未遂(笑)がマジで笑えない理屈だとしっかり知らしめられた事、人として壊れた士郎にとって魔術として扱うには効率の悪い投影がどれほど似合っていたのか、そしてその投影が如何なる結果で生み出され、結果を齎すのか。
これら全てが丁寧に説明され、視覚化され、足りない箇所は容易に想像できるからこそ、前述のゲームと言う媒体がfateには優れていたと知らしめられました。
・セイバーの魅力
可愛い可愛いと囃し立てられるものの、今までわたしには彼女の魅力が理解できていませんでした。
それもそのはず、容姿や一見してわかる属性に彼女の魅力は無かったのだから。
羞恥を徐々に覚えるその様、世界の理から外れてまで不器用に生きるその姿、それに腹ペコ属性や可愛いもの好きが揃えばあぁこれは可愛いな……と納得せざるを得ませんでした。
・Zeroとの関連性
公式が限りなく正史に近いif……と宣言していたので、まぁ臭わせる程度だろうとそっち方面は対して興味も無く触ったのですが。
……なんだねこれは!! Zeroほぼ正史じゃん! いやそう言っていたけど!?
この筆舌し難い感覚をまとめると、
「当時fate追っていた人、過去の話掘り下げられないで無事だったのかなぁ」
です。
セイバーが時折意味深な態度を示していたり、最終的には究極まで相反する切嗣を"人は変われる"とZero外で認めた素振りを見せたのは感慨深いため息が漏れました。
あと切嗣の死因をここで知って、よくもまぁとこちらにも感嘆。
要点をまとめるとこんなものですが、全編通してfateに圧倒されていたのは言うまでもないでしょう。
最終的に微笑む事ができた士郎と彼女の姿はただただ安らかで。
#凛
アニメで先に全容を知っていたルート。
終えてみると……あのアニメ、とんでもなく質が良かったんだな、と。
当然ゲームには100%の魅力が詰まっているのですが、アニメ化に至り戦闘の華やかさに理詰めで舞うキャラ、空気感だけでなく空気そのものを見せる媒体で、心理描写ですらテキスト中心のゲームよりもスムーズ&説得力を持たせて120%の魅力を引き出していた事に気づきました。
追加シーンも素晴らしく、
アサシンが胸を開かれている傷がゲームで想像できるものよりも酷く、それを傷の酷さにしては軽く流しているアサシンが格好いい(R18版ではCGあったのかな?)
激しいバーサーカーVSギルガメッシュ戦と、その幕切れにて英雄王を驚愕させる足掻き。
士郎VSアーチャーで固有結界の使用、及びそれを士郎のもので塗り替えていくシチュエーション。
士郎VSギルガメッシュ戦でアイアスと爆風を利用したアクロバティックな移動、ギルガメッシュの躊躇いと数々の敗因。
そしてストイックなtrueよりも、華やかな日常を手に入れたgoodエンドのほうがいいんじゃね? 感はアニメにて追加された後日談により消え失せる事に。
とまぁ先にアニメを見て気に入ってしまったからか、ゲームをプレイしている最中は常に比較箇所を探しているような感じでした。
いい感じに尺を圧縮しているにも関わらず、ゲームと比較して物足りないと感じるようなシーンがほぼ無かった事はかなり開発陣の熱量を感じます。
どうしてもアニメ版に目が行きがちですが、VSアーチャー戦ではゲーム特有の描写で幾つか特筆して光る点が。
1.剣と腕が物理的に一体化している
2.呼吸と心臓が止まっているが、士郎は動き続けている
3.本人は以上二つの問題に気づいていない
……ほんと一般的な死ななきゃ安いを上回る、無茶で格好いい描写多いなぁ!
ルート自体は凛ルートというよりエミヤルート。
展開や戦闘は熱い物が多いのですが、要であるメッセージ性は少年漫画のような根性論なので、理屈だけを見たいのならば別の作品のほうが優れているかなと。
非常に男性陣の魅力が引き出されており、fateの中核を成すルートであると思うのでおすすめです。
#桜
一番ネタバレの少なかったルートとは言え、他ルートよりも水面下で物事が進むせいであまり引き込まれる事なく途中まではひたすら怠かったです。
何か起きても多用される場面転換、シロウ視点では何もわからないというか記憶がそもそも飛び始めるせいで没入感が非常に薄い。
凛ルートの道場でイリヤが「HFでは主役級に上がる」と宣言していましたが、そんな発言意識の隅に投げていた上に道場回収も放棄してPCで作業の片手にVITAを流し見。
「何があったかは知らないけど、わたしまできらっちゃったらかわいそうだもん。
だからわたし、シロウが何したってシロウの味方をしてあげるの」
この辺りで一気に引き込まれました。
いやいや、今まで感情的に敵対ばかりしていたイリヤが、他よりも仲良くしていたとはいえシロウに当たり散らされてしまい、それを受け止めるとは……。
復讐する意味を見失っていた、士郎が桜を守る立場で、セイバーや凛などに守られる立場では無かった。あとはイリヤが器としてほとんど機能していない事も理由になるでしょうが、誰も味方してくれないのならば私だけでも、は普通言えない。
書いていて気づきましたがこの辺りシロウ→桜やアンリマユに通ずる答えになりますね。個人的にはこの一声はとても大きなものだったと思います。
――そして舞台は整のり、光を浴びなかった役者や設定に焦点を当て、かつての立場はそれぞれの事情により流転し、今まで嫌になるほど想像させてきたもしもを、心行くままに歩き続ける。
王道を歩いた、真髄に辿り着いた、なれば残りは邪道か。
十のために一を切り捨てて来た彼でもなく、その一すら許容しないと胸を張るわけでもなく。
引け目も、負い目も、罪悪感も劣等感も屈辱も後悔も何もかも抱えて、一のため十でも百でも犠牲にすると覚悟した、たった一人がための正義の味方。
総じてとても満足のいく作品でした。
#正義
正義、正義の味方、大のため小を切り捨てるのか。
この辺りがfateでよく聞くテーマだと思います。
同様に正義について掘り下げた作品『装甲悪鬼村正』
こちらは、正義、武力、悪を罰するという事は悪を殺めるという悪。でしょうか。
死や暴力という生々しさを嫌というほどに描写しながら答えを模索するのですが、どちらも何が正しい、正しくない、その中で自分はどうするのか? というメッセージを投げかけて来るので、悩める思春期の青年達にこれらをぶつけてみたいんですが、レーティングという壁が邪魔をするのでしょう。
学園物
エロゲでもデリケートで誰でも抱くような問題を丁寧に解く作品が多く、せめて学生とまでは言わないまでも若い内に触れて欲しいなぁという作品は多々。
"大人は実のある正論を語っているつもりだが、子供は経験が無い故に深く語られない言葉をハリボテにしか感じられない"
という名言がまぁ
エロゲ問わず当て嵌まる事を実感できるなぁと、感傷に浸ったり。
……そんな名言、今作った嘘なので探しても無いですよ。
#最後に
次触るfate作品はFate/hollow ataraxiaになると思います。
例によって核心のネタバレは食らっている作品、果たして積み崩す事ができるのか。