
『うたわれるもの』『うたわれるもの 偽りの仮面』『うたわれるもの 二人の白皇』
本記事では主に二作目、三作目について触れます……一作目触ったの何時でしょう。
シリーズとしては、獣の耳と尻尾を持ったヒトの中に、常識も力も無く脆弱な人間である主人公が世界に放り込まれ、知識を駆使し生々しい戦争を経験しながら世界の本質、主人公がどういった存在なのかを掘り下げていく
SLG&
ADVゲーム。
というのが特徴でしょうか。感覚としては異世界物が近いのかも知れません、全然違うんだけど。
二作目から触れていきましょう。
・ストーリー
過去作同様ひ弱で常識を持っていない主人公が、どうにか悪知恵を働かせその場凌ぎを繰り返し、気づけば成り上がって国を左右する立場に位置している。
仲間になる皆は素性も知れなければ、大した掘り下げも無く気づけば同じ路を歩んでいるような連中ばかりで、こうした仲間と共にする国の命運や彼、彼女らの人となりを真に知るのは三作目……と二作目はほぼ導入と割り切った方が良いレベルです。十分本作だけでも楽しめるのですけどね。
導入部分とあり尺が足りなかったり、未熟や成長過程のキャラが多くストレスを抱く時間も少なくはありませんが、物語が崩れ始める序破急の急、終盤に至った時からは既に物語へと引き込まれていた体を己の意思で傾ける事になるでしょう。
愉快な仲間達との日常や、時折見せる世界の裏側に血生臭さ、そして二作目の幕締めは是非その身で味わって頂きたいという他に無いです。
・グラフィック
線の使い方から、影まで美しいの一言。
SLGパートで扱われる3DCGも特筆するものではないが、綺麗に見えるし何より気持ち良く動く動く。エフェクトも派手でありながら、視認性を保っており言うべきことは無し。
・音楽
全体的に流れるような律動感あふれる曲や、しんみりとした曲が突出して印象に残ります。
『不安定な神様・劇伴』はイチオシ。
・ゲーム性
SLGパート
育てて殴ればよい部類ではなく、陣形からバフデバフまで戦況全てを考慮して丁寧に進めなければ難易度ノーマルでも厳しい塩梅。
理に適った戦争状況に戦術はここにも表れ、けれどビジュアルまではそこまで付随するつもりはなかったようで、そのような堅実な立ち回りを求められるものの、実際にキャラクターが戦う姿はファンタジー設定活かして華麗に皆が踊り、プレイヤーはそれに合わせてタイミングを合わせボタンを押す事で更にアドバンテージを得られる仕様。純粋に殴り合っていて飽きません。
繰り返し遊べるようなものではないと思うのですが、かなり良い出来ではないかと(シナリオ読み進めたくて戦闘飛ばしたくなる時が生まれる本末転倒は放置して)
二作目では若干物足りなかったUIや仕様は三作目ではほぼ改善されて、連携攻撃という戦術でもビジュアルでも映える要素まで盛り込んでくれたのは非常に嬉しい所。
・総評
一作目。世界観を元に今後脇役として華を添えるキャラ達。この時点で作品としてはこれ以上無い架空戦記物、衝撃的展開、
SLG要素を持ったノベルゲームとして成り立っている。
二作目。一作目を引き継ぎながら、新しい物語の基盤となる部分。三作目の導入と言い切れるものではなく、若干尺や風呂敷を広げたままではあるもののなまじ質が良いせいで次を早急に求めてしまう。
三作目。堂々と胸を張れるうたわれるもの完結編。
三部作全て揃い良作からそれ以上の何かに昇華する作品。
これ以上飾る言葉が見つからない傑作です。
以下ネタバレ込みの感想を。
偶然と勘違いと、前時代の知識に人情、そして運命により成り上がる。
与えられた立場を背負える気質があるわけでもなく、従来そのような生き様を歩む立場にあるものでもなく、当然最前線で戦える武も持ちえるどころか一般人よりも遥かに非力。
なれど、なればこそ、その覚悟だけで、修羅道を歩むほか彼には無かった。
「我が名はオシュトル」
「あなたに全ては背負わせたりしません……!」
友として生きて死する道を歩んだ男の決意が、
二人の男を死なせる事になってしまった少女の自責が、
幼く人の前を歩く事を強いられた存在がそれでも前に進むという覚悟を抱く有様が、
自身を押し殺し職務を全うする女性が見せる余所への動揺が、
全てを把握し弟を抱きしめる母、その胸で堪え切れず己を見失う彼の姿が、
死に際にしてようやく親友を見失っていた事を悟った彼の後悔と安息が、
――ただひたすらに涙腺を攻め立てる。
というか二作目終わりから三作目入ってあまりにも悲痛なシーンが日常的に続いていた上に、上記の琴線揺るがして来るシーンが中盤に密集しているせいで、初めはどうにか表面張力で堪えていた涙が母辺りから零れだして、それ以降はもう拭くのは諦めて作品に専念しました。
別にお気に入りのキャラ含め誰々が死ぬでショックを受ける人間では無いのですが、生死以外の細かな機微で感情を大きく揺さぶられる事が増えて老いを感じます。
さて……これ以上なに語りますかね。
色々と記したい想いはあるものの、作品の長所は挙げればキリが無いですし、逐一メモする余裕すら無く進行していたので具体的に論ずる事が難しいです。
短所は指摘する事が無粋な程の出来というか、そもそも数が少なく目立つ物も無いので作品という枠組みでは無視出来てしまいます。
キャラの所感でも綴っておきましょうか。抜粋です。
・主人公
二作目では愛嬌ある怠け者。わたし自身ダメ人間なので彼の悪癖には苦笑いしつつ共感してしまいます。
ただ三作目に至るまでの覚悟や技量、文字通り人が変わるほどのものであり、それでいて突拍子も無い結果だと思えるのは導入に使われた二作目があってこそでしょうか。
ユニットとしては一作目同様補助要員(元の人間性全然違うのにね……)
目立つような活躍の無い縁の下の力持ちですが、三作目からの刀を振るい始める辺りは非常に熱い。強いとは言っていない。最終戦のステータスによる演出も最高でした。
・ネコネ
本作における最大の問題点。この子が吉と出るか凶と出るかは人次第でしょう。
わたし自身二作目終盤までは愛着とヘイトの比率が3:7であり、ネコネ(あるいはクオン)にいじめられたらルルティエの笑顔を見たくなる、完全に主人公と同じ心境に陥っていました。
そして二作目ラスト、走り出した彼女に「あかん、これ完全にやらかす流れだ」とvitaを持つ手が祈るように震えていました。そして振り切れるボルテージ――
怒り、そして絶望に暮れる彼女に対する……期待。落ちる所まで落ちた人間がどう這い上がるか、そのような様子を作中で抱いていた三割の愛着が切望したのでしょう。結果どうなったかは敢えて語るものではないと思います。
自責に溺れるその姿、顔を崩して泣き崩れる様子、戦闘時に聞こえる二度は犯さぬという後悔の叫び。いやぁ堪らない。
ユニット面では作中一度触れられたように戦闘の要そのもの。
回復はもちろんバフも優秀で、育ってからは一ターンに攻撃と防御を同時にこなす便利さ。
SLGの常識が覆る感覚です。支援役にスポットが当たりずらいのであるのならば、いっその事補助的な攻撃を同時にできるようにすればいいじゃない。
・オウギ
初めから人として完成されているため安心感が酷く、腹の内は見せないけど背中は預けられる感。とりあえずコイツが傍に居れば大丈夫やろ。
それ故か最終戦におけるキウルとの協撃必殺で漏らした一言が沁みます。
ユニットとしては高い機動力にデバフ要因。巨大な敵の裏周り移動を制限したり、ひたすら雑魚相手にデバフ入れ続けてほんと双子とネコネの次ぐらいに酷使した。
攻撃回数と、クリティカル判定が多くて単純に使っていて楽しいのも優先して起用した一因か。
・ヤクトワルト&シノノン
魅力ある男性陣が多い中、その頼り甲斐と砕けた塩梅が良くてお気に入り。
ユニットとしても第一軍で、同じ属性のルルティエから出番を奪った罪深い男。頼むから早く必殺技覚えて。
娘であるシノノンもいいキャラしてる。
本来経験の少ない幼児キャラというのは作り込みが難しいはずなのだが、シノノンは達観している様子と幼さを兼ね備え、この親にして子ありと納得させる力を持っていた。
・最後に
三作目ラスト付近はアマテラス使った辺りで締めておけば良い物を……と思ってしまう尺に、後味の悪くなっていく惨状。
結果的にはシリーズを締めるに相応しい展開を見せたり、うたわれるもの特有の別れの演出、微妙に強引ながらもハッピーエンドを見せてくれたので満足ですが。
あと気になるのは開発陣完全に
エロゲから足を引いたんですかね。
どの土台でも良い作品を生み出せるのなら、少しでいいからそっち側でも出して欲しいという想いや、金にならないのならば気兼ねなく
CSで活躍して欲しいという気持ちが混ざり合って微妙な感じです。
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