##冬のさざなみ
価格フリー、全年齢。
どんな狂気にも共感し、ワンシーンワンシーンに心動かさられる。
アメトカゲでも思ったけど心情描写凄いし、特異な背景を用いているわけでもないのに雰囲気作りが強いです。
病んでいるのは何故か、と言えるライターだと感じ、とても負の感情を描き説明、納得させるのが巧いと思いました。
前向きなエンディングから、質の良い鬱から大衆に望まれるだろうカタルシスを生み出せるサークルだ……と確信し、今更ながら興味湧いたものを追って行こうと思ったきっかけでもあります。
時系列的には、
夏のさざんか→パコられ→冬のさざなみ
が最も近しいのでしょうが完全にプレイ順は真逆に。
終わった今も特に後悔は無かったですね。エピローグのその先をどう歩むのか、を既に知っているならそれはそれで楽しみ方がありました。
クライマックスで勝手に幸せになる二人と、その部外者――という構図はとても新しく感動しました。
何と言うか無数にあるビー玉が勝手に転がって、思わずそれに見惚れる感じです。
##パコられ
800円前後、R-18。
ただただ悲痛で、他の感情を抱く事が難しかった。
純粋さの本質はそこであり、世間の理はそうであったと思っているからこそか、樹里の暴力的なまでの途切れない正論に一番魅入られた。
純粋さに共感し、正論に同意する中で、わたしは。
時系列が存在している事に最後ようやく気づきました(遅い)
となると本作で救いは主人公にもプレイヤーにも一切無いと言えるし、さざなみの結末で主人公が救いを見つけられる未来が薄すぎて震える。
あの二人と同じ時間を過ごしていたら何かしらあるかも知れないが帰ったよな最後……。
この作品に登場するクズは基本一癖も無いただのクズで、正直見ていてつらかったです。
この前にニルハナやご主人様にあの体験版をプレイし良いクズを多く知ったのも原因でしょう。
そういう意味ではパコられだとピアスのおじさんが癒し枠疑惑。彼は良い奴だったよ、シーンや立ち絵とまでは言わずとも、名前だけでもあげてほしかった。
パコるではないタイトルの重みや、ヒロインの病む前から病んだ後、果ては別の立場を持つキャラクターまで一人で演じきった声優の素晴らしさが目立っていたと思います。
物語を観測する存在、プレイヤーを意識する作品群により、フィクションに悲劇を望む欲望はとても醜いという持論が後押しされた印象も強いです。
……わたしが基本鬱展開を望んで居るだって? そんな責め方されたら照れるじゃないか……。
#紗倉の最期
廃棄され稼働している冷蔵庫に入り、凍死による自殺を行った――と解釈しています。
さて、ここで気になるのは傷だらけの身体で服を着ずに身を丸めている様子に、酷く安息を感じるという点ですね。
本作でのみ抱いた物ならば深くは考えなかったかも知れませんが、冬のさざなみから既に同じイラストに同一の感想を抱いていたので、ビジュアルだけでそう説得できるほどの力があるのでしょう。
・凍死による自殺
凍死による自殺は苦痛と手間が少ない手段と知られています。
寒い地域なら比較的条件を選ばず、気温や場所さえ気をつければ気軽かつ確実に死ねます。
凍死という死因はもう一つ利点があり、死後の腐敗が非常に遅くなる事で死体の劣化が抑えられます。
衣類の類を着なかった事は死に至るまでの時間や苦痛を短縮する目的もあったと思いますが、ここまで来ると意図的に凍死という手段を選んだ可能性が浮かぶと思いました。
裸体で丸々と胎児を連想させます。
それでいて傷だらけの身体に嫌悪があるのであれば、多少凍死までの時間がかかり苦痛が増えようとも衣類で身を隠すか、そもそも生前の肉体に近しい死因になる凍死は偶然選び取るなどは決して避けて、意図して避けるものに分類される類だと思います。
つまりイラストに安心感を覚える理由のとして、
・凍死という手段は意図して選んだ
・自身の生き様を否定したくなかった
・冷蔵庫という胎の中で生まれ変わりを夢想、或いは激動に満ちた生から穏やかに眠るよう生涯を終えた
という点が挙げられます。これによりシナリオを把握せずともイラスト一枚で死体に安心感を覚える、と推測しました。願望かも知れませんけどね。
##ご主人さまにあ
1000円前後、R-18。
若干怪しさを見せる公式サイトからの人物紹介から、実際曝されるまで明言されない人物相関図。
全てが明かされたクライマックスでは三者共々心中満ち溢れる……というか吹き零れており、プレイしているわたしも目か口の端から色々と零れてしまいそうでした。
七年間重ねた罪は重い。かなり罪状はあるものの、救ってやると思いながらも実際手すら伸ばさなかった。結局のところ責める罪はこれに尽き、他は風の前の塵に等しい。
七年間罰を受け続けた少女、七年間罪を重ね続けた少年。この二人が居るのなら居てしまうのなら、七年間祈り願い堪え続けた人が居る。
彼≒ご主人様
幸福≠正論
生=可能性=罪×罰
本作という物差しでは、人一人の命が結局どれほどの重みを持つかは測りかねた。今後とも己の中で燻る要因の一つだろう。
企画シナリオに加え、イラストまで一人で実現した本作。
多少他と比べれば劣って見えてしまいますが、見れる部類の技量なので、あとはもう調和の質が上がった事による好感のみです。
再度声優に疎いわたしが、演技に聞き惚れた作品でもあり、
主人公の演技がかった自嘲に、狂い切れないもどかしく致命的な苦痛。
浅見さんの理屈と感情、それに制御しきれない激情。声から感じるほどのアメとムチの使い分け。
そう、本気の慟哭って抑揚が無くなり棒読みに聞こえるんですよね。常に声量MAXで、これ以上上がる場所も無く、これより下がる事もできず。
その心からの叫びを、マイクから距離を離す様子無く音割れ無しで実現してくれる技量。あぁ、濡れる……。
みつ希の狂えず壊れてしまっているキャラも好きですが、それ以上に様々な物を信じ、託し、諦めながらもある筈の無い場所から響く悲鳴により浅見さんが一番お気に入りです。
##夏のさざんか
あなたという世界で、わたしという存在を壊さないで。
価格フリー、R-18。
完全に時系列を逆に進んでいた衝撃と共に始めた本作。少し憂いたものの前述した通り特に作品ごとの面白さが損なわれる事も無く、幾つかあるように見えたテーマを美味しくぺろり。
ブログに書き写す際、そのテーマについて掘り下げようと思いましたが、適当に思いついた初めの一文がこれ以上ない的確な表現だと思うので蛇足はしません。
猫撫ディストーション辺りで世界(&価値観)は人それぞれ。
シャボン玉のような輪郭が時折触れ合ったり、食い込む事であろうことか同じ世界に生きているだなんて錯覚してしまう――という理屈を習いましたが、ようやく最近実感を得られて来た気がするのでタイミングが良かった感じ。
ここで連作全体を振り返って、何か一つ言葉を残すならヨモギさん可愛い。
さざなみで恵んでもらった焼き鳥もきゅもきゅしていた辺りから思っていたけれど、じれったいような小動物的な可愛さが、哲学的な物言いで虚勢を張っているようで尚更際立つ。
また細かい挙動、行動理念、対外的評価から、同類を見るようなと共感を覚えるのだけれど、表現によっては「自分に似た生き物が可愛く見える」という複雑なものに成り代わったりする。深くは考えないでおこう。
・父子関係
ご主人様にあと夏のさざんかは父子関係が類似している。
ただこちらは嫌悪に対して、ご主人様のほうは好感に近しい感情を抱く。
主人公というフィルターがかなり強いのか、それともご主人様の場合、たとえ救いようのないダメ人間な彼でも、自分以外の誰かを自分に出来る方法で救おうとした不器用な生き様が尊く見えるのか。
##アメトカゲ
価格フリー、全年齢。
ほんと何時プレイしたのか覚えていないけれど、今でも思い出せるものがある作品だったので特に再プレイせずに雑感で。
徹底しモノクロでどこかノスタルジーを感じさせる光景に、淡々と男女が何でもあるようで何でもなさそうな会話を紡ぐ良い雰囲気ゲーだったと記憶しています。
他作と違い性的だったり残酷な描写が少なく、誰にでもおすすめできるような作品。構成も実にgoodでした。
##ニルハナ
サークル最終作。
力の入れ方も目に見えて違い、価格に比べて質も量も多かったです。
イラストの美麗さに惹かれて、本作発売が決定されたことにより噂を聞いていた過去作のプレイに、本作の体験版をプレイし終えた直後に買いと即決した作品です。
DL販売を毎日楽しみに待ち、初めに最も期待したが故に良くも悪くも思うところが多い作品となりました。
ここから更に記事一個分ほど文章が続きます。
中には厳しい意見もあると思いますが、わたしが感想をまとめるという事は良い作品に分類されますし、厳しい事情の中こうして最終作となりましたが素晴らしい物を生み出してくれた開発陣の皆様には何よりの感謝を。
#体験版での魅力
・男性陣の癖があるクズさ
公式サイト見てわかるクズさ。実際に世界へ触れて見て更にわかる素晴らしいクズさ。
他人の不幸が快楽と主人公達に共感し、ヒロインに罵られるわたしのような人はいちころですね。
・ユウがタツヤに対して蛆と見下しつつも、確かな行動に対して見せるちょr……ツンデレっぷり。
見下してくれた! やった!
しかもやたらめったら遠回しな言い回しで責めて来る上に、デレるぞ! ユウちゃん可愛い!!
・テマリの影と、その中で侵されてしまった淡く薄く、それでも確かだった純粋さ。
過去作同様人間の影である部分の描写が凄いです。
それでいてテマリの美しい部分が魅力的に描かれていたり、それを理解して堕とそうという邪悪な連中が輝きます。
また体験版時点で確認できるシーンとして、夕焼けを背景に両手を翼のように広げて創作論について語るユウのシーンがあります。
作中屈指のシーンであり、また最終作である本作では開発陣の今まで歩いて来た軌跡を代弁するよう創作について語るシーンが多くて、創作者の人々には何かしら響くと思います。
本来こういった作者の影が見えるような描写は作品の価値を危ぶむものですが、特筆して気取る様子も無く、まるで何時も行っている呼吸を続けるように創作に携わるキャラクター達がそれぞれ語るので、明確に作品の質を上げる要因となっています。
逆に体験版から製品版まで感じた不満点は、
・システム周りが不便
・シナリオ、イラスト、音楽どれもが突出しているクオリティだが、調和はイマイチ
と感じました。今の時代ボイスカットoffが無いのはつらい……。後者の欠点は色々と贅沢だと思います、ご主人様にあに最近触れたので尚更強く感じただけかも。
#キャラ周辺 テマリ
あまり物語の核心に触れる事の出来ないキャラクターでしたが、体験版での吸引力は彼女も確かに一因でした。
犯される苦痛よりも、その先――淡い好意を抱いている少年の人生を滅茶苦茶にしてしまった事が何よりの苦痛。
どうしても目先の痛みに意識が向いてしまう"他人"に比べて、彼女の主張は冷水を垂らされるような意識の拡張を覚えました。
#クレハル
本作サークル最終作ということで、所々過去作意識したのだろうかと思う点が見受けられました。
テマリもパコられの彼女モチーフかな?と思ったり、カスリもどこからか寒い海風が聞こえて来そうです。
そんな中、懐妊中入水自殺したという亡霊であることが明言されているクレハル。
……あぁ、思い当たる節があり過ぎてどの作品とクロスオーバーしているんだろう、と。
容姿と懐妊した過去はつばきを思い出し、冬のさざなみでヨモギさんが失敗したifの存在なのか。
でも声質や価値観はみつ希に似ている……と二択で悩んでいたら、どうやら資料集にみつ希と明言されていたようです。
個人的には少し残念。
一本道である『ご主人さまにあ』ではifと捉える事も難しく、みつ希と浅見さんの自死が主観的理由の描写が無く、自殺という鍵により幾らでも想像を掻き立てる事を許された宝箱のように感じていたからです。
ただエピローグでまぁ死ぬよね……と思わせた彼女の末路が、実際どのような理由あってかが語られたのは爽快感を伴ったとも言えるでしょう。とにかく今回も資料集DL販売して欲しいです。
#マユ
今回のベスト不幸枠。
底の底から引き上げられたかと思えば、何度も上げて落として上げて落として……。
代わりと言っては何ですが登場回数、ポジション、イラスト差分等では恵まれていた。
#ナミダ
登場回数多いわりに、目立った行動が(相対的に)少なくて、味のある脇役的……かと思いきや、ラスト付近のユウが持っていかなかったものの告白でくらっときました。
あぁ……その存在の証明は救いに成り得るし、この物語という時間が最もナミダにとって幸福であったのではないのかという、幸せなのか残酷なのかよくわからない感情を呼び起こします。
#ユウ
チョロイン……間違えました、奥ゆかしきメインヒロインかつツンデレ枠です。
作中の選択肢は如何に彼女を選び続けるかという宣誓になるでしょう。
見せ場は序盤(体験版部分)に集約していた気がする。登場頻度ががが……。
#カスリ
ユウに対して既に故人であるにも関わらず、作中どんどん株が上がっていくイレギュラー。
元カノ強い
エロゲってなんだ……。
魅力的な強さだけではなく、最終的に精神的な強さも手に入れられていたというのは涙腺に来る。
出来る事なら最期の不幸に出会わなかった結末も見たいものだが、まぁバッドエンドで十二分に満たされる。
#リュウヤ
一癖も二癖もあるクズであり、劇中が進むにつれてその魅力は加速し続ける。
・整理した資料を燃やして破棄する
タツヤが推察した通り、シュレッダーにより書類を処分する行為にこそ目的があるのは明白な上、鍵をかけていた資料に目を通される事を予期していた事から否応にも資料に目を通す事が目的の一つだったのだろう。
というかこの辺りの後ろめたい行為、資料を前面に出してタツヤを震わせるための武器として積極的に扱う手腕、口から出て来る破綻の無い名分をすらすらと述べる様子があまりにも凄すぎて、何故か処分する資料の内容について喋ってごめんなさい、鍵勝手に開けてごめんなさい……と咄嗟に謝りたくなるどこからきたのかわからない背徳感を覚える。
・飲食店で早々に手の内を明かして攻める大胆さ
上記のように行動がアクロバティックであり、プレイヤーの想像を上回って来る素早い距離の詰め方、色々と速い割に最後までしっかりとチョコが詰まっているような手際の良さが際立つ。
何と言うか二手三手を先に指している勝てないラスボスの風格がある……いや彼、どっちかというともう一人の主人公なんだけど。
・マユに対する理屈と感情
初対面のマユに対して、弱き者を慈しむ事の出来る慈悲と、家族という絆は過去が作る物であり遺伝子が繋ぎ止めるものではない、と妹として完全に見ていない感情が両立している。
一見無理がないように見えるが、突然出会った一目惚れもしていない赤の他人を、見返りを求めずに面倒と自覚して救いの手を差し伸べる……と表現すると異常さが少しずつ見えて来るはず。
次に動くのは父親を殺害したシーン。
この場合殺人というのはあくまでも結果であり、目的はマユの救済である。
世間的枠組みに当てはめるのであれば、マユを救うという善行を、最も効率的かつ効果的に見える殺人という悪行にて行い、それを果たした結果罪悪感を覚えるのは殺人の実感ではなく人の目であり、またこの手で救いたく助けたはずのマユが手間取らせ、自身を糾弾した時点で自己保身のために見切りをつけて街に逃避した。
愛憎という言葉が近いのか、二律背反しあうだろう感情と理屈を自分の物として扱い、都合の良いように扱う手際が素晴らしい。切り替えが早く、それでいて年相応に場当たり的な行動を取ってしまう事も人間味あふれてこうか……評価を抱ける点だろう。
ちなみに人を殺めた罪悪感に、自主的に陥る事は一切ない。
罪の意識は他者評価に依存する=個としては思うところが無い=世間に露呈したり、犯行を知る気を許している人間にバレなければオールオッケー
という一貫した行動理念。あまりにも揺るがな過ぎて美しさすら覚える。
次はマユと再会したシーン。
子供である彼女から大人という保護者を奪い、より悲惨な人生を歩む事になった原因として責め立てられ動揺しながらも、主観的にも客観的にも一度自分以外の頼れる人間に預けて様々な経験を積ませるべきだ、と最良の動きをするリュウヤくん。君いいねー確かに自己分析しながらも、大切な人間にとっての一番の幸せを選び取れるその理念、晴れ晴れするよ!(かなりお金や犯罪行為といったリスクを背負っているが、あまりそちらには興味が無い模様)
そして数ヶ月後。
ようやくまともな(?)経験を積んだマユちゃんに対して、何が一番彼女に刺激を与えず前向きになれるかを(自己快楽を優先しつつ)選び取る手腕。相変わらず冴えているし、死ねと言われて本気でそく死のうと動ける純粋さも眩しい。
帰国し月日は流れ――失恋。
マユ自身の幸せを本気で願いながらも、友情を感じつつも恋敵として本気で死んでくれないかなー?と愛憎を向けられる澄田さん。羨ましい。
結果この時点でリュウヤがどのような選択を選び取ったのかというと……表面上二人の仲を祝福しつつ、自棄になって傷心旅行。
同じ自棄になるならマユのこと好き放題するものかと思うのだが、世間体を見た論理的な動きは間違いなくプロ。傷心旅行も本気で行っている辺り可愛すぎる。
そして最大の分岐点。
呪いと共に傷心旅行から帰って来たリュウヤくんを待っていたのは、友人であり恋敵でもある澄田の訃報という祝福。
――喜べ青年、君の悲願はようやく成就された。
不幸に次ぐ不幸により痛まし過ぎるマユちゃんは今は放置しておいて、この時点でリュウヤの思考はマユの事を娘を預ける気持ちで託していた澄田の死に対する悲しみと、喜び両方。
時は満ちたというのか、今まで正しい理屈ばかり優先し、自身の悪しき感情を蔑ろにしてきたのだが、今まで我慢してきた上に傷心旅行から帰宅直後というタイミング、マユに手を出さないという大義名分が限りなく薄くなった今、遂に憧れの彼女へ手が届く。
ちなみにこのシーンのBGMは陵辱系ではなくてほんわかしたものが流れています。
今まであらゆる一番の気持ちの中から正しい事を選び我慢してきたリュウヤ、決壊し兄へ抱く感情を憎悪から依存へと移ろわなければ堪え切れないマユ。
いやーこれは間違いなくらぶらぶですねー。
総じて見せる多くの心理描写を、矛盾として片付けるのではなく全て内包できる人間として見せるキャラクターに昇華している素晴らしいケースでした。
非常に好感が持てる。大好き。
#タツヤ
人の不幸に巣くう蛆であり、リュウヤと同類と評される辺りリュウヤがタツヤに似ているのではなく、逆になっちゃうよねって。
リュウヤの方が気に入ってしまったのでどうしても向ける意識は薄くなるが、別の結末を迎えた存在であり、それでいて前を向き続ける事の出来る可能性でもある。
実際それぞれの選択肢が五分五分……BAD行きが五割超えていると思うので、ハッピーエンドに向かう彼は結構格好いいものである。バッドで見せる邪悪さも面白いのだが。
#起伏
後半記憶に飲まれ始めてからは常にクライマックスと言える勢いであり、それ故か〆が打ち切りエンドのようにふっと急に足場が消えるような感覚に襲われた。
バグか環境、操作の何かが悪かったのか、エンディングムービーが流れずに、CGだけ見る事になった事も不幸に拍車をかけている(質の悪い冗談かと思い半狂乱に内部データを漁ったらmpgデータがあったのでそこで確認はできた
個人的にはユウ含む三者が集い、実際儀式的な物が起こる起こらないにせよ、軽くない言葉が情熱的に交わされるものだと思っていたので、勝手な願望が叶わなかったがための失意とも言える。
マユが実際顔を合わせたユウに対して「感情を欠如させていけども対話にて知りたい」といった反応を見せている事からも、もう少し交流を強く見せたクライマックスが欲しかったと言うのが正直な気持ち。
#ニルハナ総評
勝手に期待し過ぎたり、趣味に合わなかった部分もあるが冷静に振り返ってみれば十分に面白かったなぁという作品。
是非ともフルプライスでプレイしたかった、と言える。細かい箇所の質や、全体的な量がもっと欲しいとわがままが出てしまう。
サークル作品内ではもっとも性的嗜好に合っていたかも。まぁ背景少しでも意識すると危ういシーンが多すぎたんだけど。
##ランキング
比較的短期間で同一サークル(ブランド)の作品を大量に触ったので、個人的ランキングを考えてみました。
#作品お気に入り
1.ご主人様にあ
酷く共感する意見が多く、エンターテイメントとして見入る箇所も多かった。
2.ニルハナ
瞬間風速では他作に劣るが、持続風速、合間合間の景色や、見惚れるシーンが多くて全体的な質の高さを感じた。
3.冬のさざなみ
連作の〆として。クライマックスやヨモギさんの描写が強い。
#お気に入りシーン
1.『パコられ』樹里の正論武装
単独で見ても圧倒される気迫。今まで同情してきたものを全て吹き飛ばして頷いてしまうような暴力的な正論の扱い方。
2.『ご主人様にあ』クライマックス
必然的に訪れた三人の末路。
滑稽で、痛ましく、故に何より失われた温もりが惜しい。感情的なものもそうですが、理詰めで狂っていく恐ろしさも戦慄。
3.『ニルハナ』ユウ、公園での創作論
上二つが負の感情を表に出したものに比べて、クリアして振り返った今も純粋で単純に美しいその姿はどうしても琴線を揺るがせる。
#お気に入りキャラ
1.浅見『ご主人様にあ』
2.リュウヤ『ニルハナ』
3.みつ希『ご主人様にあ』
3.ヨモギ『夏のさざんか、冬のさざなみ』
5.テマリ『ニルハナ』
5.タツヤ『ニルハナ』
……
エロゲでこの男率。
##サークル総評
特に負の感情を描くのに突出しており、理不尽な不幸に対して何故理不尽かと、何故狂っているのかと説明できてしまう稀有な書きっぷり。
それでいてプラスの方向へオチを持っていく前向きな姿勢が基本であり、作者の中に深い絶望と常に垂れている蜘蛛の糸、或いは自己満足の作品ではなくエンターテイメントとして見れる作品として出すという強い意思を感じる。
また人を選ぶ作風を得意とするが、全てロープライスorフリー、しかも有償作品もDL販売を二ヵ所のサイトで対応しているので手に取りやすい。
ニルハナにて最終作という結果にて、それなりに熱意を持ったファンとしての追いが休止に入るの事が惜しい程。
メインであった山野詠子氏の今後に安息の期待と、ライターをやっている別ゲーにも機会があれば触れていきたい。
##最後に
本当に、ありがとう。