
四人の女子生徒が立て続けに自殺した。
その衝撃的な事件は一部の生徒たちの間で不謹慎な盛り上がりを見せ、いつしかこう噂されるようになった。
四人の女生徒は学園の七不思議の一つ、『旧校舎の幽霊』に呪い殺されたのだ……と。
多くの者にとってはくだらない噂であり、その他大勢の一人である佐伯社にとってもそうであった。
しかし、社には無視しきれない理由があった。
四人の女生徒が自殺してから、奇妙な夢にうなされるようになったのだ。
熟睡することができず、日に日に、自覚できないほど緩やかに衰弱していく中、社の前に一人の少女が現れる。
ベルベットと名乗った不思議な少女は、社に告げる。
――あなた、呪われている。 ――
公式サイト。
本来霊の見ることすらできない霊的素質皆無な主人公が、呪われたせいで霊的な存在と密接になり、なんか誰よりもラスボスの風格漂わせる霊能探偵所長の下、吸血鬼や土地神、単に霊視能力のあるクラスメイト、その親戚、過去作であるなないろリンカネーションの主人公及びヒロイン一同と霊に立ち向かう話。
ホラー要素を含むが終始恐ろしい雰囲気ではなく、しっかり日常ではギャグで笑わせてくるし、霊的な存在で敵意を見せる相手もそれほどではないので威圧感は少ない。ただショッキングなイラストや、派手な演出は行わないものの怖いものは怖く見せてくるので、苦手な人は厳しいかも。
過去作キャラが結構重要な立ち位置に居ますが、本作のみでも減点対象にはならないかと。必要な説明は端的に済ませてくれるし、本作キャラの出番を奪っていく感覚も無い。キャラに対する愛着や、後日談的なフレーバーは当然プレイしていたら楽しめると思います。
日常のギャグというかノリが独特かつ秀逸で、各ルートで表現したいコンセプトもしっかりとしたシリアスで表現されている。
メイン要素である
ホラーは当然、恋愛要素やそこから発展するエロも上質……この辺全て両立できるゲームってそうそう無いですよね。やばくね。
シナリオは明確にラスボスを示しており、それを弱体化するために七不思議を解決していくというわかりやすい構成。
それでいて呪いに関する謎や伏線は一見複雑で、最終ルートまではどういうことだと頭の隅に残るものの明かされてみれば笑ってしまうようなものも多く。
久しくエロを評価できる
エロゲ(混乱)
艶めかしいイラストに、ストーリー進行上自然に織り交ぜられる情事。テキストは端的に余分な表現を省いて必要な描写を、けれど盛る時はしっかりと盛り。
衣装やシチュエーション含めバリュエーションも揃え質量ともに良し。あとわたしはどちらでもいいですが隠語に修正無しです。
主軸である
ホラー要素も良質。
グロテスクだったり、おどろおどろしく心臓が冷えるようなイラストは扱うものの、派手な演出で責めない好みなタイプ。
ショッキングな描写も影を先に出したり、テキストや音楽で来るぞ来るぞと心の準備を許してくれる。たまに予想を上回る恐怖が存在し、一瞬遅れて「これこえぇー!」となる構成は
ホラーの味を損なわせる慢心を許さない。
劇的な恐怖はないものの、終始どこか切ない感覚はプレイしていて付き纏い、グランドというか色々と種明かしされる最終ルートですら割り切れない感覚が多い。
開発側が伝えたいメッセージの一つにもそれが顕著に出ており、正しさ、善とはなんだろうな……と思い知らされる。正しいことは通用せず、生と負は逆転しやりたいことをやってしまえば周囲からは悪と見做されて。仕方無しに取った選択は最善とも言い難いどうしようもないもので。
ただ、作中でも発せられている通り「あぁ、優しさは確かにあったな」と心地の良い憂いが読了感と言えるでしょう。
ホラー好きではないけど苦手ではない、その程度の耐性がある人ならばおすすめできる
エロゲです。
以下ネタバレ込みの感想を。
タイトル画面秀逸だな!
徐々にキャラが増えていくもののその緋色が昼と夜の合間で揺れるせいで孤独感が拭いきれない。
そしてここで聞き慣れる流れる"緋色の空"オルゴールverとボーカルverがあり後者がクライマックス時に使われた際の興奮具合。激しい歌い方をしておらず、歌詞も聞いている余裕が無いので感情に影響する余地は無いと思うのですが、自然と体の芯がゆっくりと火照るような興奮を覚える。
各ルートについて。攻略順。
・双子
頼れる地主神の双子姉妹、その内側を知るルート。
彼女達の過去は特に物珍しいものでもなく、感情の起伏が少ない二人も相まってただ淡々と記録を眺めるような感覚。
ストーリーの主軸からも早々に脱落しており、どちらかというと姉妹を交えた日常を重視するお話……なのだが短い。初めに攻略したルートということもあり、思わず「フルプライスなのに尺だけミドルかよ!」と叫びたかった。
エンディング後の一幕はどれほどありきたりで、どれだけ尊いことなのかを思うと涙腺にダメージが。ボリューム自体は少なかったものの、終わってみれば短く綺麗に纏めていたなぁと明確なコンセプトを持って締められたシナリオに納得。
神の神、いや誰かの神になるなんて言葉にしてみればおこがましいけれど、こうして些細ながら形にするとはなんと偉大なことなのか。
・ベルベット
死に急ぐ人間がこのように危ういものかと実感させるルート、人間じゃなくて吸血鬼だけれど。
不老で、一般人よりも生命として強かったり霊に強く出れるベルベット。
怪奇に対していつも背中を見せて、皆を引っ張っていたにもかかわらずその内側がこれほど脆弱な物だったと認識したのなら、途端に守ってくれるはずの存在が守らなくてはいけないと自然に抱いてしまって。
ヒロインが銀髪紅目ということで贔屓目に見ても、話の確信に触れていないものの七不思議に対する物語という基本の大部分を押さえており、丁寧な
ホラーして、人間が持たない死生観を綾なし、燃える場所はしっかり燃えて。
ベルベットを寿命という円環に堕としパートナーとして寄り添ったり、ふざけ気味にSっ気見せて肉体的に堕とし抱いたりと、共通である日常パートのギャグや居心地の良さからシリアス、エロまで非常に高品質に纏まっていた。
世間的には
アルビノフェチに含まれるわたしですが、どちらかというとそういった存在を愛でたいと言うよりそういった存在そのものに成りたいので、あまり
アルビノ的特長を備えた存在に性的興奮は覚えないどころか萎えることが多いですが、ベルベットに関しては乱れた姿があまりにも愛おしく、また潜在的マゾも合わさった小動物的な性質もあり普段はスキップする情事を興奮しながらも主人公との微笑ましいやり取りをのんびりと眺めていました。ごちそうさまでした。
ラスト付近の寄り添うCGは尊い。
・葉子
世界の底側を、一線超えつつもひっくり返った態勢から辛うじて落ちていない、そんなルート。
葉子よりもだいぶ美里にウェイトが占められており、要の葉子も全てが裏目に出て本調子ではない。
葉子風に言うなれば"裏返った話"がコアになるかと思いきや、これまた尺の都合で導入部程度に落ちついている。
堕ちた主人公の妖怪譚見たいよね……見たくない?
・佳奈
かなりズボラ……というか猫被って本性がゲスいと称される佳奈ちゃん。
ジト目や遠慮の無い姿は心地良く、友人や恋愛対象を通り越したパートナーに欲しい、そんな魅力的なキャラに出来上がっている。
確信にかなり近づきつつも、救えなかった社と佳奈の物語。
どう収拾つけんのかと、このルートでは主人公がどうなってしまうのか気になっていましたがそう来るか……!
・美里
キャラ自体はそれなりに魅力があるのだが、他ルートで十分察することの出来る真意等を明文化し、怪奇から離れただ幼馴染の姉と行う恋愛劇。よくも悪くもそれ以外の要素が薄く、他ルートで見せたような"らしい"コンセプトの光り方が無かった。
あって損はないルートだったが、魅力的だけれど攻略不可として置いていたほうがいろいろと得だったのではないかなと。
・グランド
全ての核心に触れる。
ただそこに驚きはさほど無く、ただただ悲痛なまでの生々しい現実が待ち受けているだけで。
必要かと問われれば必要で、おもしろかったかと言えば普通に落ち着く。
主人公の隣に特定のパートナーは居らずとも皆が居る日常がそこにあり、他ルートでどうにかなってしまった主人公はどれにも成りきれていない中途半端なもので。
まぁ上手く言葉にできない胸に溜まる感情は悪いものではなく、スタッフロールが流れ終わった際自然と出てしまう溜息は心地が良かったです。
思い返してみればベルベットが抜きん出ていました。
好みである容姿や寡黙な態度に惹かれたわけでもなく、掘り下げてようやく出てきた本質に、そんな彼女と過ごす様々なものを欠けた日々が切なくも大切なもので。
ミーニングを最高に活用していたルートもここですし、死にたがりの吸血鬼というコンセプトを巧く表現できていた点も強い。今後も何度か周回しそうです。
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